ネタメモ27
猿美
猿比古は狂っている、と誰かは言う。他人に興味を示さない猿比古からすれば、そんな他人の評価は不必要だ。だけど、その評価は正しい。
――美咲を虐めて悦ぶのは狂っているかい?
多分、猿比古は問うだろう。この状況を見て、「狂っている」と弾劾して欲しかった。
「なあ、美咲……」
お前も――俺を「狂っている」と思うかい?
目の前にいる美咲を見て、猿比古はにんまりと笑った。
かつて、猿比古と美咲は恋仲だった。告白して、キスして、セックスも済ませた。猿比古の場合は、少々順番が違ったが。
それが――裏切り者になった。
美咲は、猿比古を酷く恨んだ、憎んだ。
どうして、裏切るのか、理解出来なかった。
吠舞羅として、恋人として、許せなかった。
美咲の問いに答えるなら、猿比古は言う。
「――美咲を、愛しているからだよ」