ネタメモ8
マボワ
時臣の存在は綺礼にとって大切なもの――だと思う。何故疑問なのかと問われれば、ギルガメッシュがいつも言うからだ。時臣は取るに足らない存在だと――。
その度に否定しているのだが、肯定も出来る。つまり肯定も否定も出来ない存在なのだ、時臣は。
時臣は不思議な存在で――掻き消したくなる。
……今、なにを考えた?
よりによって、師に対して――掻き消したくなるなど!
考えを打ち消して、綺礼は努めて冷静になった。……尤も、本当は消えてなどいないのだが。
地下で溜息を吐いた綺礼の前に、ギルガメッシュが現れた。綺礼を揺れ動かす当人だ。
「なにやら悩んでいるようだな、綺礼」
「お前の所為だ、ギルガメッシュ」
「ほう? 我の所為とな。聞いてやろう」
「聞くまでもない。お前には察しが付いているのだろう」
時臣のこと。案の定、ギルガメッシュはにやりとしている。
「掻き消すなら、さっさと掻き消せばいい」
「……なにをする気だ」
「殺すなり、破壊するなり、掻き消すのは簡単だ」
「ふざけるな。師を掻き消すなど……!」
「それとも我がするか?」
あくどいことを言って、ギルガメッシュは消えた。酷い奴だ。人の不幸を嗤って吸い取る奴だ。そんな奴に時臣を獲られる訳にはいかない。
何故だか綺礼は、高揚していた。
それは綺礼にもわからない性。
時臣は、ゆるりと寛いでいた。綺礼に気付くと、微笑む。
「やあ、綺礼。なにか訊きたいことでもあったかな?」
――矢張り、殺して、壊すことなど出来ない。こんなにも愛しいのに。
ギルガメッシュは、どうするのだろう。時臣をどうする気なのだろう。
気になって仕方がない。
「いえ、ちょっと師の様子を見にきただけです」
返事しないのも変だと思われるので、取り敢えず返事する。
そうか、と時臣は深くは追究しなかった。ぱらぱらと紙が捲れる音がした。
ああ、こんなにも無防備だ。いつギルガメッシュに掻き消されるかわからないのに。
守ってやりたい、のに。
掻き消したい、とも思う。
――何故?