あわよくば

腐女子でオタクのアニメ語りと日常

ネタメモ14

真幸

 楽になれたらどんなに嬉しいか。ゆらゆらと揺れ動く感情。定まってはいないけれど、不安定だけれど、確かに存在している。

 「好き」だと――。

 自覚したのは最近だ。でも、ずっと前から好きだ。彼のちょっとした仕草。無愛想な笑顔。テニスに打ち込む姿。

 その全てに惹かれる。女の子にモテる彼に一度、何故付き合わないか訊いたことがある。

 彼は一言、素っ気なく言った。

 ――つまらないから。

 彼は恋愛に興味ないと思ったが、まさかそんな理由だったとは、くすりと笑った気がする。

 そして問われた。お前はどうなんだ?

 面倒だから、かな。

 似たり寄ったりな回答を、出した。それは、彼に言えなかった自分に対して。意気地なし。言えるだろ? 俺と付き合ってみようか、って――。

 あのとき飲んだスポーツドリンクはやけに冷たかった。

 一人で練習していると、さりげなくタオルが手渡された。

「真田……」

「お疲れ様。そんなに打ち込んで、身体壊すなよ」

「もう、そんなに心配しなくても。真田は練習しないの」

「お前を見ているだけでいい」

 ――どきり。

 やけに熱を帯びた真田の視線に、赤面する。そんなに見つめられちゃ……。

 ちらりと見た後、テニスの練習に入る。そんな意味ありげなこと言わないでよ。期待しちゃうから。無理だとわかっているのに。

 真田を意識すると、動きが疎かになる。息を吐くと、もうやめた。

「終わりか」

「軽くやるだけでいい。疲れちゃうし」

 テニスラケットを仕舞うと、手首を掴まれた。

「真田……?」

 なんだか変だ。いつもの真田じゃないみたい。

「幸村……」

 だからなんで、そんな目で見るの。恋人でもなんでもないのに。やましいみたいじゃないか。

 暫く見つめ合うと、真田はなにか言おうとして、やめた。

「いや、いい……。なんでもない。早く帰った方がいいぞ」

 それだけ言うと、真田は背を向けた。なに? なにが言いたかったの? 教えてよ。そうじゃないと――この気持ちに終止符が打てないよ。

 ゆらゆら、ゆらゆら。

 まるで惨めなこの気持ち。

 早く拒絶してよ。いつまでも、期待しちゃうから。いつまでも、待ってしまうから。

 どうして、なにも言わないの。

 なにを、言いたかったの。

 教えてよ。好きだから。本当に、好きだから。

 幸村は渡されたタオルで滲んだ涙を拭いた。

 好きな癖に、告白すらも出来ない臆病者。

 ああ、いつか気持ちが爆発してしまいそうだ――。

 好きだよ、真田。

 だから早く話して。あのとき、なにを言い掛けたか。待っているから。