あわよくば

腐女子でオタクのアニメ語りと日常

ネタメモ33

ギル時

吸血鬼パロ

 遠坂時臣は、外国の血が流れている紳士として、冬木の名家に君臨している。しかし、その実態は違う。裏では吸血鬼――として人間の血を求めている。

 吸血鬼など、お伽噺の上でしか存在しないと一般人は言う。だが、言峰綺礼は知っていた。吸血鬼は確かに存在していて――魅了すると。

 冬木の教会で神父を勤めている綺礼は、半吸血鬼だ。神父は、そう言う吸血鬼や悪魔についても詳しい。綺礼にとって、吸血鬼は身近なものだった。まさか、冬木の名家である遠坂時臣が吸血鬼だとは知らなかったけれども。

 吸血鬼には、人間を魅了する力がある。気付いたときには、綺礼は時臣に恋をして――半吸血鬼になっていた。時臣を恋い慕うのは、なにも吸血鬼の力だけではない。純粋に、時臣に惹かれた。

 それでも、時臣は綺礼を受け入れない。理由も、綺礼は知っている。絶対的なる王が、綺礼の恋路を阻んでいた。

 吸血鬼の世界には、元老が幅を利かせている。その元老と同等なのが、王だ。そして、王――ギルガメッシュが、時臣の恋人らしい。吸血鬼は、男同士の恋人は珍しくない。容認もされていた。だが、綺礼は怪しんでいる。本当に、時臣の恋人なのか。時臣を労っているのを見たことがない。まるで、亭主関白だ。

 ギルガメッシュなんかより、時臣を幸せにしてあげれるのに――と綺礼はライバル視した。

 綺礼は礼拝堂で祈りを捧げる。言峰家と遠坂家は縁がある。遠坂家が吸血鬼であることも、知っている。それ故に、綺礼は半吸血鬼になることを決めた。

 教会を出た綺礼は、時臣の館へ行った。裏門から入ると、綺礼の前にギルガメッシュが現れた。

「……なにか」

「貴様に言いにきた。――時臣は我の物だ」

「時臣師を物だと見なすとは、まさに亭主関白だな。お前には、渡さない」

「ふん、勝手にほざいていろ」

 ギルガメッシュは勝ち誇ると、綺礼から去った。ギルガメッシュがいるならば、時臣もいるのだろう。ギルガメッシュがいるのは気に食わないが。

「やあ、綺礼」

 時臣はロッキングチェアに座っていた。傍らにギルガメッシュはまだいなかった。

「こんなに早く来るなんて、なにかあったかな?」

「いえ、教会の仕事があまりなかったので」

 綺礼は、普段神父の仕事をしていて、陽が落ちた後しか会えなかったりする。

「師こそ、こんな日中に起きていて大丈夫ですか?」

 時臣は、完全なる吸血鬼だ。カーテンは閉めきっているが、顔色が悪く見える。

「今日は大丈夫だよ。王から、特別な薬をもらったからね」

「薬? 試薬品だったら、危ないのでは……」

「心配無用だよ。こちらでは、かなり出回っている薬だから」

 こう言うとき、綺礼は歯痒い。時臣と対等になれないことが悔しい。

 歯軋りをそっとすると、ギルガメッシュの嘲笑いが聞こえてきそうだった。精神を研ぎ澄まして、嘲笑いを消す。

「それに、今日は雁夜が来るからね」

 間桐雁夜は、時臣の幼馴染みだ。遠坂家と同じ吸血鬼の名家だが、彼は吸血鬼としての生き方を否定している。吸血鬼の家に生まれながら、人間だ。

 暫くして、雁夜が館に来た。間桐家は、生まれながらの吸血鬼ではない。

「起きていていいのか?」

「うん、それより間桐主催の宴はどうかな?」

 近頃、間桐家が主催する吸血鬼による宴が行われる。吸血鬼御三家である遠坂、間桐、衛宮が主な賓客だ。