あわよくば

腐女子でオタクのアニメ語りと日常

ネタメモ35

ギル時

吸血鬼パロ

 暫しの逢瀬を終わらせ、ギルガメッシュは一族の棲家に帰った。吸血鬼同士の恋愛は、男女差別なく行われる。男の妊娠も、可能だ。だが、まだ正式に元老に認められていない二人の関係はおおっぴらに出来ない。

 時臣も、ギルガメッシュから血をもらった。だから、喉の渇きはない。仕事に取り掛かろうとした時臣は、裏口から綺礼が来たのに気付いた。

 言峰綺礼――この街にある教会の神父。何故、神父が吸血鬼である時臣に会っているかと言うと、彼も又、吸血鬼だから。尤も、綺礼の場合は半吸血鬼。半分吸血鬼で、半分人間だ。

 神父である綺礼は、吸血鬼の存在を知っていた。神父と吸血鬼は相容れない。だが、綺礼は時臣に虜になった。吸血鬼はその美しさで人間を魅了する。綺礼はまさしく、魅了され、自ら半分吸血鬼になった。

 綺礼は周りに半吸血鬼であることを隠しながら、時臣だけを慕っていた。恋愛的にも。しかし、時臣がギルガメッシュと通じていることは知っている。それでも、横恋慕は続いている。

「どうしたのかな、綺礼」

 遠坂家と言峰家は親しい。綺礼の父親である言峰璃正が時臣の正体を知っているかはまだわからない。

「貴方でしたか、この一連の事件の犯人は」

「犯人なんて、人聞きが悪いなあ」

「ハンターが来たら、どうするつもりですか。心配です」

 ハンター。吸血鬼はそれを恐れている。ハンターは、吸血鬼を殺すことが出来るから。人間にバレるよりも、恐れる。

「……私はね、唯一私を殺害出来るハンターに会いたいのかもしれない」

 綺礼の顔色がサッと変わった。どうせ死ぬなとか言うのだろう。時臣は、溜息を吐いた。

「貴方が死にたいと言うならば、私が殺してあげましょうか?」

 綺礼の突然の申し出に、時臣はふふ、と笑った。

「詭弁かな、それは」

 吸血鬼が吸血鬼を殺すことは出来ない。だから、戯れ言と言われても仕方ない。

「私は半分人間です。私なら、貴方を殺害することも可能です」

「そうだね。でも、私は本気で死にたい訳じゃない。比喩だよ、比喩」

 時臣にとって、綺礼は弟子であり、弟のようなものだ。決して、恋愛対象にはならない。ギルガメッシュに言ったことも、綺礼にはなかなか言えない。

 時臣は、赤ワインを取り出した。まるで鮮血のよう。吸血鬼は血を飲むが、普通の食事もする。

「ところで、本題はなにかな?」

 詭弁を話すために遠坂邸に来た訳ではないだろう。

「貴方の望みが叶うかもしれません。……ハンターの気配あり」

 この街にいる模様、と綺礼は伝えた。

「しかもハンターは――吸血鬼殺し、衛宮切嗣です」

 吸血鬼殺し――衛宮切嗣。吸血鬼の世界で恐れられている、凄腕のハンター。シルバー・ブレットを用いて、あらゆる吸血鬼を殺してきたと言う。

衛宮切嗣――」

 時臣は、赤ワインを飲み干すと、満足そうな笑みを見せた。

「ふふ、どんな風に改革してくれるか楽しみだよ」

 その笑みは――とても美しかった。

 切嗣は、吸血鬼の匂いがするこの街を歩いていた。吸血鬼ハンターの組織から与えられた仕事を、こなすだけ。

 この街では、謎の殺人事件が起こっている。死体には血がなかった――それだけで十分。どこぞの吸血鬼の仕業に決まっている。

 吸血鬼の匂いは、紅く染まっている。その色を頼りに、切嗣は遠坂邸の周りに来た。

「ここか……?」

 突入するにはまだ早い。切嗣は、暫く偵察することにした。

「お前、なにやってんの?」

 バッと振り返ると、儚げな青年がいた。いや、彼は吸血鬼ではない。匂いもしない。

「ちょっと用があってね。君、ここに住んでいる人を知っているか?」

 切嗣は、遠坂邸を指した。

「ああ、俺の友達の遠坂時臣が住んでいるけど。お前、時臣の知り合いか?」

「そんなところさ」

 青年――間桐雁夜は、切嗣を不審な目で見た。雁夜の視線を感じながら、吸血鬼――遠坂時臣のことを知った。

 しかし、時臣は鋭かった。館の門が開いたかと思うと、時臣が現れた。綺礼はいない。

「どうしたんだい、雁夜」

「なんか変な奴がいるなーと思ったら、お前の知り合いだとよ」

「知り合い……」

 時臣は、切嗣に目をやった。その格好は、一目でハンターだとわかる。

「ああ、そうだよ。積もる話もあるから、雁夜は家に帰ったら?」

 人間の雁夜を納得させて、時臣は言った。

「ようこそ、吸血鬼殺し――衛宮切嗣

 そのお辞儀は、まさにもてなしの格好だった。