あわよくば

腐女子でオタクのアニメ語りと日常

ネタメモ36

ギル時

吸血鬼パロ

 すぐに殺そうとした切嗣は、面食らった。ハンターである切嗣を歓迎する吸血鬼など、見たことがない。

 唖然とする切嗣を、時臣は館の中に引き入れた。豪華な応接間に、切嗣は座った。

「君は……殺されたいのか?」

「私はね……吸血鬼の世界を壊して欲しいんだ。君に殺されるのは御免だけど、ハンターとして吸血鬼の世界を改革して欲しい。私は、好いた人と満足に逢瀬も出来ない。そんなの、可笑しいだろう?」

「呆れたね、敵に改革を乞うなんて。僕は、ハンターだ。吸血鬼を皆殺ししろとも言うのか?」

「私と私の好いた人だけの世界が欲しい。元老に邪魔されて、なかなか会えない」

「まったく、吸血鬼の世界は破綻しているよ」

「否定しないよ」

 切嗣は自身を落ち着かせるため、煙草を深く吸った。時臣の、吸血鬼の魔性に吸い込まれそうだった。落ち着いて、銃口を向ける。

「やっぱり、殺すのかい? しょうがないね、簡単に引き下がるとは思っていないし」

 だけど、私も死に急いでいるだけではないからね――と時臣は素早く動いた。

 吸血鬼の動きを見切れない。ただでさえ、切嗣は動揺している。気付いたら、時臣は切嗣の背後でナイフを持っていた。

「くっ……殺すのかい?」

「いいや、でも――少しの間眠ってくれないか?」

 時臣は首筋に噛み付くことなく、切嗣に口付けをした。切嗣の舌に噛み付くと、そのまま切嗣は意識を失った。ただ、濁った血の味がした。

「茶番は終わりか、時臣」

 当たり前のように、ギルガメッシュがいた。

「まさか、雑種と口付けを交わすとはな。お仕置きが必要だな?」

「申し訳ありません……」

 時臣は頭を垂れながら、確かに悦んでいた。結局、時臣にはギルガメッシュしかいないのだ。

 ギルガメッシュは切嗣を一瞥すると、頭を踏み付けた。

「忌々しい、人間め」

 それだけを吐き出すと、時臣のお仕置きを始めた。

 やがて、切嗣は目を覚ました。しまった、と後悔したが、まだ生きていた。

 目を向けると、ギルガメッシュと時臣がいた。時臣には、妙な色気を感じてしまう。

「おい、人間。貴様が時臣と口付けを交わしたことは、死に値する。だが、時臣が貴様に言いたいことがあるらしい。よく聞け」

 まさか、あの英雄王に会えると思わなかった切嗣は、面食らった。

「あのね、取り引きをしないかい? 私は、殺人事件を起こすことを止める。代わりに、君は元老を殺して欲しい」

「は? 吸血鬼にとって、元老は尊敬すべき存在じゃないのかい」

「私も王も、少し特殊でね。元老が嫌いなんだよ。有体に言えば、死んで欲しい。ハンターとして、殺すだけでいい。手引きは私達がするから。いいね?」

 有無を言わさず、時臣は言った。断って、時臣に殺されるより、元老を殺した方が安上がりだ。切嗣は、この取り引きを受け入れることにした。元老を殺して、そのままあらゆる吸血鬼を殺戮すればいい話だ。

 元老の棲家は、洞窟の中だと決まっている。切嗣はありったけの武器を用意すると、洞窟に入った。吸血鬼の――それも元老――匂いが濃い。切嗣は吐き気を我慢しながら、進んでいった。

 元老は、三人いる。それぞれ、かなりの力を持っている。油断は出来ない。

 切嗣の目の前に、一人目の元老が現れた。

「……人間か」

 元老は酷く億劫に言うと、切嗣に飛び込んできた。

 ――速い!

 流石、元老だ。切嗣は用意していた火炎を投げ込むと、シルバー・ブレットを撃った。